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鷹が傷を負う (アサシンクリード/マリク→アルタイル)
マリ→アル、で本編前の過去話。 ※捏造注意 アルタイルは優秀ではあるが、残虐非道で、人を人と見ないというのが前提にあったと思う。人の感情をよく理解できてないというより省みないところがあったと思う。
マリ→アル、で本編前の過去話。 ※捏造注意 アルタイルは優秀ではあるが、残虐非道で、人を人と見ないというのが前提にあったと思う。人の感情をよく理解できてないというより省みないところがあったと思う。
その夜以降、俺たちは互いを名前で呼び合うようになった。
マシャフで一番優秀かつ優美な鷹といえば皆が口をそろえて、彼の名前を言うだろう。
彼の目は正確で、狙った獲物は決死で逃さず、鋭い刃で一瞬にして息の根を止め相手に悲鳴を上げる瞬間も与えない。そして何よりも高く飛翔し、何よりも美しくダイブする。
歩いている姿、ただそれだけでも常人とは違うものを醸し出し、雑踏を歩けば誰もが目を止めた。
「見られているな。」
「祈ればいい、お前はなぜもっと隠れない。」
「ああ、そうだな、友よ、その通りだ。」
友、などと簡単に口にするが真意がこもっていないことは百も承知だ。彼は優秀で美しく、そして気高い、だからこそ傲慢でその性質たるものは人を人とも見てないものだった。
そ んな彼の歪んだ残虐性さえ感じさせる性格形成には、彼の生後間もなくより両親から放されて家族の愛情というものを知らずに育てられてしまったこと、物心つ いてすぐに暗殺技術をしこまれ彼に「それ」でしか生きるすべ、生きている意味がないと思わせたかの人が原因とも思っている。彼の生来はもっと優しいのでは ないかとも思っている。でも、彼はかの人を他の誰よりも心酔しており、彼の暗殺用のブレードが血を浴びない日はなく、彼の心は日ごとに優しさというものを 忘れていく。
しかし俺が口を出すことはできない。少しでも彼の刃を止めるようなら俺はかの人にとがめられる。そして、かの人のことを悪く言おうものなら、彼に俺は殺される。分かりきっていたことだ。
友、など軽い言葉だ。彼は、友、もきっと簡単に見捨てる。兄弟を危ない目に遭わせることなかれという信条など彼はもう忘れているのではないか。
彼は、友、の本当の意味を知らない。
「あの男。」
「なんだ・・」
「静かにしてろ・・・・・。後をつける。」
街中を歩いていると彼がそう言って足の速度を速め音を忍ばせた。目深にフードをかぶった彼の視線の先には一人の商人風の男がいた。男はこちらに尾行されていることも知らずにそのまま人気のない路地に行く。
そこを狙って彼は男の胸倉に勢いよく掴み掛り殴った。
「ぐはあ・・」
男は相当な体格の持ち主だったが、彼のこぶしの前にはぐうの音もでないですぐに「やめてくれ」と降参した。
「いえ、なぜ俺たちを見ていた」
「み・・見ていない!!」
「テンプル騎士のものか・・」
「違う・・!」
「・・往生際が悪い。」
彼 は左手をひらりとかざすとそのまま左手の今や失われた指の奥より鈍く光る鋭利な細身の剣を飛び出させた。アサシンブレードと呼ばれる、マシャフ砦に住まう 俺たちアサシンに与えられた暗殺用の武器だった。俺たちはこれを忍ばせて標的にぎりぎりに近づきそのまま息の根を止める。なくした指に感覚はないはずなの に、ブレードが相手の肉体に突き刺さるとき、俺の左手指は流れ出る体液と血の熱さ、しびれを感じた。痛みでもあった。この指をつきたてるような動作はかな りこなれてないと体勢を取るのも難しい。しかし相手を殺せる、抱きついたように見せかけて殺している、という状態は秘密裏に行う暗殺任務のときこそ欠かせ ないものだった。
彼もその剣をつきたてる時、俺と同じような感覚をもつのだろうか。聞いたこともないので分からないが、感じていたとしてもだからどうしたと笑われるだけのような気もしている。
「この剣の錆になるか・・それでもいいが・・」
彼の低い声。脅しをかけるのにも、この声はすぐれていた。低音の脳裏に響くような声は美しいが、怖い。証拠に男は彼にさんざんに殴られ上に刃物で脅され、鋭い声と目で射抜かれて足元に水たまりなどできてしまっている。
「わかった・・いうよ・・・!」
だから、助けてくれと言って男は泣いた。そして男は俺たちが想像もしてないようなことを言った。
「君を、見ていた・・」
それはおびえるというより、語尾にはどこか陶酔のような色も交じっていた。
「・・・ほう、俺の正体を知ってると・・そういうことか。」
「そう、じゃない。君があまりにも・・その・・」
そこで口ごもる。それに彼はじれったいとばかりに腹部にけりを入れる。
「ぐほ・・っ・・」
「とっとといえ!」
「それは、君が・・綺麗だから・・だ。」
「・・・。」
彼は一瞬目を見開くがどういう類の言葉を言われたのか分かったのだろう、次にはかわいそうなものを見るように目を細める。彼の中で、この男がとるに足らないものになった、というのを意味していた。
「なあ、君・・名前は・・・・」
男が近づいている彼の顔に少し息を荒げていた次の瞬間「ぐひ・・っ・・・」と声を立てて失命する。
彼のアサシンブレードに刺されたのだ。俺はことの成り行きを見ていたが、彼のブレードを止めるべきだった。しかし遅かった。彼のブレードはまた今日も血に染まった、しかも罪もない人を殺した。これは重い犯罪だ。
「犯罪・・?この男の行為、考えが犯罪じゃないとでも?」
彼がブレードから血を滴らせながら俺の方を振り向く。
「この男は身寄りのない少年を拾っては自宅で暴行を加えていた。男は俺が近寄ったとき、明らかに勃起していた。これが罪じゃないか。」
暴行を加えていた、というのは本当か。わからない、彼はそれを既に調査済みでことに及んだのか。
それはともかくして、暴行や男が男に欲情するのは罪だ。俺たちの世界、宗教ではそれは大罪だ。
「なあ、友よ。」
友の意味など知らないくせに、そういって薄く笑う。彼は俺を共犯にしたいときこうして友という言葉を述べているようにも感じた。媚を売る、そんな意味合いにも取れる。
今も俺を友と呼び、今殺した男の血の付いた顔で笑っている。これを人は美しいというのだろう。
かの人も、こういう彼を見て「よくやった」と言ってほめるのだろう。そして彼の心に安寧の日はこないのだろう。
実際彼の思惑はどうかとして、彼はその手の男に目をつけられることが多かった。女ももちろんだが、彼の美しさは両性問わず惹かれるものがあるのだろう。
同じ兄弟の中にも彼に「そういう意味で」あこがれるものはいると聞いた。実際彼に思いを打ち明けたものもいるらしいが、彼にさんざんな目にあったらしい。詳しくは知らないし知りたくもない。
そんな彼が一度大けがを負った時があった。暗殺任務に失敗したのだ。彼には珍しいことだが、どうも敵に返り討ちにされたらしい。手当てには誰も付き添うことを彼は許さなかったが、俺はあえて行った。
彼の敗北の姿を一度見てみたいという変な好奇心もあった。自分も愚かだ。
「・・・っ・・」
「痛むか・・」
床に胡坐をかいて肩を抱きこんでいる。肩と顔からどくどくと血が流れ落ちている。俺は近づきそのまま彼の前に座る。抵抗される、もしくは帰れと一喝されるとも予測していたがそんな元気もないらしい。かなりぐったりしているように見える。
失血の所為か顔も青白い。顔、ちょうど唇の端のところにナイフの深い傷がついているのが見えた。矢が当たったのか、それとも剣で切られたのか。
「お前にしては珍しい失態だな」
「笑いに来たのか、ここには誰も来るなと・・」
口を開けるたび痛むのか眉をひそめている。
「しゃべるな、その傷ではきついだろう。」
「・・・。」
「それに利き腕では自分でも処置ができないだろう。だから俺が来た。」
「・・・なん、だと・・」
「手当をさせろ、兄弟。」
「・・・」
「それとも、友、か?」
「・・好きにしろ。」
「ああ、するさ。」
了解をもらえたことが奇跡だ。あの高慢で自分の体に誰も触れさせようとしない彼が、俺に。
手早く俺は傷の処置をした。もたついては彼に怒鳴られるだろうし(いや、それほどの元気もないか)長時間放置したままで傷が悪化すればこのまま腕が使えなくなってしまう恐れもある。
まずは出血の酷そうな腕からだ。よく怪我する仲間や弟の処置で慣れていた俺には同左もないことだった。ただ、彼の傷ということで少し緊張した。
マシャフで一番優秀な鷹、それは俺たちの財産なのだから。
「腕は終わった。痛みは?」
「まだ、ある・・」
「そうか。」
問題は顔だ。薬を塗布、するのが一番だろうが・・
「よし、布は外していい。」
止血のために顔を抑えていた布を外してもらう。彼は痛みの所為で、皮肉を言ったりこちらをあざけたりする余裕もないのだろう。素直に従っている。
それとも腕の傷を思ったより綺麗に処置した俺を少し認めたか。
「しばらく薬は禁止だ。」
指に軟膏を適量とり、そう告げる。
「そんなものしていない。」
大導師と彼が薬を使って一種のエクスタシーを高める秘術を行っていることに俺は気づいていた。というのも、そのことがあったであろう翌日、彼の体からは不思議な香りがし、眼はうつろで、体はふらついているのだ。
皆は気づかないでも、俺には分かる。たぶん、そうなのだ。
「していない・・本当だ。」
「ああ、わかった、もういい。」
触れられたくないことなのか、彼はいつもない必死さで食いついている。
「薬を塗る。」
「・・・」
胸が痛む。彼の心をむしばむ、薬物、無謀にも思える暗殺任務、血塗られた鷹の羽。決して切れない、かの人とのつながり。
彼の頬に触れる、そのまま下に指をすべらせ軟膏を皮膚にしみこませる。
「ミントだ。」
「ああ、そうだ。」
こんなに間近で彼の顔を見たのは初めてかもしれなかった。彫りが深い顔は瞼を閉じていても相当に美麗なのが分かる。
皆が噂するのは頷ける気がする。確かに、これには惑わされる。
「友よ。」
「なんだ。」
彼の目が開き鋭く俺を見る。彼の唇が動いた。「罪だ」と言っていた。
どういう意味なのか分かっているのか俺は、何を返答として言うべきかわかっているはずだ俺は。なのに、
「・・わかっている・・」
そんなことをいってしまった。これでは認めているようなものだった。
「・・・・。」
彼が沈黙したこともあり、彼の目を見るのがつらく、俺はそのまま軟膏をわたし、あとはお前でやれと言ってその場を立ち去ることにした。立ち去るこちらの裾が引っ張られているのを気づき足が止まる。
振り返る、彼は顔色を変えてないでいたって普通に見える。
「名前を教えろ。」
「は・・?」
「友、お前のだ。」
どういうことだ、こいつは俺の名前を知らなかったとでもいうのか。知らないで今まで友、などと言っていたのか。
「貴様・・」
「あいにく、俺は、ターゲットと、自分とアルムアリム様の名前しか覚えていなかった。」
「・・・・。」
「俺の名前は。」
「知っている。」
俺はどうしたものか怒って、彼に握られている服の裾を引っ張ってその手から離す。
「アルタイル――」
気づけば、こんな風に本人の前で名前を呼んだこともなかったかもしれぬ。お前、おい、兄弟、などと言っていた。それに彼にも、お前、友、などと呼ばせていた。
「そう、アルタイル。アルムアリム様に頂いた名だ。」
妙に誇らしげなのが、気に入らない。どこまでその人物を神聖化しているのか。
「それで、傷の手当てが上手い友、お前の名前は?」
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